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【裏話】広告費の入金方法で経営状況が天と地ほど変わる

WEB広告運用をしていると、「広告費を事前に預かるかどうか」という話が契約時に出てきます。

広告主のお金の流れにも直結するので、調整が発生しやすいポイントになりますが、今日はここについての話をします。

今日のお話は広告代理店からの視点です。

 

目次

 

1、入金方式の3パターン

弊社で採用している入金方式には下記の3パターンがあります。

1、事前入金(事前に広告費を預かる)

2、後払い(立て替え)

3、広告主が直接入金(アカウント貸し)

基本的にはなるべく1、難しい場合は3が多いです。2のパターンはほとんどありません。

 

2、事前入金(事前に広告費を預かる)のメリット

2-1、売り上げが立つ

事前入金の最大のメリットとして、弊社に売上が立つということが挙げられます。

売上が大きくなることで、一般的には会社の取引規模が大きいと見なされます。

そのため、後述する銀行融資など経営の安定施策に繋がりやすくなります。

2-2、経営が安定する(取りっぱぐれがない)

事前入金では広告出稿の前に広告費を預かりますので、先払いして後で回収できないトラブルを未然に防止できます。

また売掛でなくなる分、売掛保証などの保険に入る必要がなくなります。このため利益体質もよくなります。

2-3、銀行融資を受ける根拠になる

業種がWEB広告代理店の場合、銀行融資は一般的に「毎月の安定して使う経費×3ヶ月分」の金額で融資額を考慮します。

そのため、毎月1000万円の広告費を預かって消化する案件があれば、3000万円の融資を受けられる計算になります。そのためこの融資金額はトラブル時の補填に使われたり、事業投資に使うなどWEB広告代理店にとっては選択肢が増えます。

2-4、小規模事業者との取引が増やしやすい

上記のことから、広告費を事前に預かる場合はWEB広告代理店にとってリスクが全くありません。そのためどんな小規模事業者とでも積極的に取引を増やしていくことができます。

3、事前入金(事前に広告費を預かる)のデメリット

3-1、入金が複雑な場合、業務が煩雑になる

例えば

・毎月の広告費の変動が激しい

・決定した広告予算の消化ペースが途中で変わる

・広告出稿時期が運用中に変わる(月の後半分を来月に変更など)

・管理するキャンペーンが多く、キャンペーン毎の予算も頻繁に変わる

などの場合、運用実務以外にもWEB広告代理店側の作業がかなり増えるので、事前入金が逆にデメリットになる事もあります。

広告費の管理には、

1、広告主の出したい金額と時期の確認

2、請求金額、時期が1と合っているかの確認

3、入金された金額が2と合っているかの確認

4、預かった金額を1、2と照らし合わせて媒体のアカウントに入金

5、消化された金額が1、2と合っているかの確認

という手順があり、これらを行うには運用者だけでなく経理や税務との連携もしなければなりません。したがって毎月決め打ちで定額運用でない場合は、かなり管理コストがかかります。

またFacebook広告など、媒体によっては毎月請求でなく、請求金額と消化したアカウントの照合が非常にやりづらい媒体もあります。こうした広告も取引の照合に手間が非常にかかります。

これがWEB広告代理店からすると、事前入金の最大のデメリットです。

 

3-2、トラブル時に補填をする必要がある

これは広告費を預かっている以上当然ですが、弊社がトラブルを起こして広告費を無駄遣いした場合は補填が必要になります。

広告運用というのは利益率とキャッシュフローが悪いことが多いので、補填はかなりの一大事です。

しかし事前入金での取引の場合は、売上と毎月の経費が上がった分を根拠に融資を受けられますので、融資金額を元に補填をします。

 

4、後払い(立て替え)のメリット

4-1、広告主のキャッシュフローが良くなる

広告主のキャッシュフローや支払いサイクルによっては、先出しが難しく立て替えて欲しいという要望を受ける事があります。

弊社はこのパターンは基本受けませんが、この場合は立て替えをすることにより取引が広がりやすいと言えます。

4-2、すぐに広告を出したい時に対応できる

広告出稿にあたり事前入金にする場合、請求書を発行して、入金を確認してこちら媒体アカウントに反映させて、とタイムラグができます。

立て替えの場合は弊社で先に決済となりますのでスピード対応を希望される場合も対応ができます。

 

5、後払い(立て替え)のデメリット

5-1、経営が非常に不安定になる

まず、売掛での取引の場合「利益で元金を回収するまでにどれくらい期間がかかるのか」を考慮する必要があります。

この元金回収というのは後から支払われる広告費のことではありません。「急に飛ばれた時のために、粗利で毎月の預かり広告費用分をプールしておくお金」のことです。

WEB広告運用というのは広告費が大きくなるに従い、売掛や手数料の減額を打診されやすくなります。それなのに扱う金額が大きくなると運用工数が増える分リスクも増え、さらには広告主が広告費を払わず消える(飛ばれる)事例もそこそこ聞きますのでこうした対策が必要になります。

 

後払い(立て替え)の場合はこうしたことを考慮しなければならないので、お金の流れが非常に悪くなります。

弊社ではWEB広告運用を広告費の20%で受けていますが、ある程度のレベルの優秀な運用者を担当にすると粗利で8%〜10%しか残りません。

そのため元金回収までに単純計算で10カ月かかります。さらに長期間の場合決算を跨ぎますので、粗利に法人税がかかり30%程度持っていかれます。

こうして税金を考慮すると粗利は5.6%〜7%となり元金回収までに20ヶ月程度かかります。20ヶ月を超えてようやプールする分を超えて自由に使える粗利になることを考えると、非常に割りの悪い取引となります。

5-2、未回収のまま飛ばれる可能性がある

前述の通り、広告費を数1000万程度立て替えしていて飛ばれた案件を何度か聞いたことがあります。

上記の事例では、知人の通販会社で広告運用をしていた案件でした。

ある程度の企業でも計画倒産はあり得ますし、私も他人事ではないと考えています。

この場合は一瞬にして自社の負債となってしまいますので、一生を棒に振る可能性もあります。

 

5-3、回収できない危険性があるので契約が煩雑になる

万が一広告費の回収が出来ない時の場合を想定して、立て替えでは契約をかなり厳重に結ぶ必要があります。

・通常の法人同士の契約

・法人が倒産した場合も代表または役員、その親族が売掛金を全額支払う公正証書を取り交わす

・代表者、親族、役員の現住所がわかる住民票の提出

・上記全てを弁護士同席の上行う

 くらいは最低限した方がいいかなと思います。

売掛というのは聞こえはいいですが、「一時的に借金してお金を肩代わりすること」に変わりはありません。したがってそれなりの契約が事前に必要です。

上記を提示して断られるくらいなら始めから契約する必要もないでしょう。

 

5-4、売掛保証に入る必要があり、利益率が非常に悪くなる

広告費の回収ができない場合を想定して、売掛保証に入る必要があります。

ところがこの売掛保証、会社により幅はありますが1〜3%と結構高額です。

上の項目で書いたとおり広告運用の粗利は税引き前で8〜10%、ここから1〜3%引かれてしまうと経営的にはかなりの打撃となります。

こうしたことから、基本的に先払い(立て替え)ではデメリットがメリットを圧倒的に上回ります。したがって弊社では基本的に行っておりません。

 

6、広告主が直接入金(アカウント貸し)のメリット

6-1、広告費管理が広告主になるので運用側は楽

請求書の発行から入金金額の確認など、3-1で書いた工数を全て削減できるので、広告費の管理がなくなり代理店としては非常に楽になります。

6-2、広告費の変動や予算の入れ替えが激しい場合の対応が楽

広告費の変動や予算の時期をずらすなどイレギュラー対応が多い場合、この方式ですと広告主が会社の意向を素早く反映しやすくなります。

そのため運用側としても運用に集中できる環境が構築でき対応が楽になります。

6-3、未回収の心配がない

広告主が直接アカウントに入金するパターンのため広告費の未回収が発生する(飛ばれる)心配がありません。その点では経営リスクが非常に低くなります。

7、広告主が直接入金(アカウント貸し)のデメリット

7-1、入金に関して、広告主側の手間が増える

入金業務のコストを広告主が負担することになるので、広告主にとっては意外とここが負担になったりします。

広告主も担当者が予算を決めた後、経理担当者がYahoo!いくら、Googleいくらと振り込むことになりますので、意外と自社で管理しようとするとうまく予算が反映されないことがあります。

また、Yahoo!は検索とディスプレイで振込口座が違ったり、GoogleYahoo!でカード決済時と引き落とし時のタイミングが変わったりしますので経理担当者の工数はわりと増えてしまいます。

7-2、売上が立たずトラブル時補填もできない

WEB広告代理店としては広告費を預からない分、売上が上がりません。

したがって2-1〜2-3で書いたように経営面で見るとやや評価は落ちますし、案件が増えても銀行から融資金額が増えることはありません。

仮に月100万円の案件で補填が必要になった場合、毎月の運用費では粗利が少なすぎてとても補填することができません。

となると補填の際には融資からお金を取り崩す必要があるのですが、アカウント貸しの案件が増えても融資の根拠となる「売上」「毎月の経費」が増えません。そのため融資を受けられません。

またアカウント貸し契約の場合、運用データを抜き取られる可能性もあるので、広告代理店側にもある程度のリスクが発生します。

こうした背景から、弊社ではアカウント貸し契約の場合はトラブル時の補填ができない契約内容になっています。

 

7-3、突然広告主が出稿を辞める可能性がある

広告主自身で広告費の振り込みをしていると、ふと「今月は出稿いらないんじゃね?」となり契約中にも関わらず急停止される可能性があります。

この点毎月広告費を預かる場合と比べて契約の継続率が落ちやすくなる可能性があります。

もちろんそんな事を言われても契約期間中であれば運用費を請求しなくてはなりませんが、気まずくなる事はこの上ないです。 

したがってここの部分は事前に話をすり合わせておいて、書面で合意を取っておく必要があります。

 

以上になります。

広告代理店の運営をする方は役立ててみてください。